AIで既存システムを調べる:直す場所と直してよいかを分ける
AIが見つけた修正箇所は候補として受け取り、直してよいかは調べた範囲と受け取る側を確かめてから人が決めます。
この記事の要点
- AIが返す修正箇所は候補として受け取り、直してよいかは別に決める
- AIに調べた範囲を書かせ、読めなかった場所も残す
- コードの外で、CSVを受け取る側の読み方を聞く
- テストが通っても、変更を通すかは人が決める

目次
AIが返す修正箇所は候補として受け取る

A&Aの考え方
AIが返す修正箇所は直す場所の候補で、直してよいという判断ではありません。ここで言う既存システムの調査とは、今動いている社内システムのコードをAIに読ませ、変更がどこまで響くかを探る作業のことです。
仮想例
仮の例として、社員数人の会社で、受注管理の社内システムを数年前に外注先が作ったとします。社長は、取引先に毎晩送る表形式のファイル (CSV) から、もう使わない項目を一つ消したいと考えました。
仮想例
社長はClaude Codeにコードを調べさせました。AIは項目名で検索して書き出しの処理を見つけ、「この1行を消せば対応できます」と返しました。
仮想例
この答えで分かったのは、項目を書き出している場所だけです。同じ処理が、画面からのダウンロードや夜間の自動送信にも使われているのかは、まだ分かっていません。受け取る取引先の仕組みが何を期待しているのかも、分かっていません。
出典に基づく事実
開発者向けにコード検索の道具を作るSourcegraphという会社は、2023年にAIのコーディング支援「Cody」を出しました。Anthropicはこの会社の事例を公開しています。事例によると、Codyはコード全体を踏まえて質問に答え、込み入ったコード同士の関係をつかむ助けになるとされています。
出典に基づく事実
Sourcegraphは、無料版のCodyの既定のモデルをClaude 3 Sonnetに替えました。その後、Codyの提案を開発者がそのまま自分のファイルに取り込む割合が約75%増えたと、事例は書いています。
A&Aの考え方
この記事を書いているAutomate & Augment (A&A) は、この数字を、提案を使うかどうかを開発者が自分で決めた結果だと読みます。使うと決めたのは、コードを読める開発者です。
A&Aの考え方
社長がコードを細かく読まずにAIの答えをそのまま採ると、直してよいかを判断する人がいなくなります。だから、AIの答えは直す場所の候補として受け取り、直してよいかは別に決めます。
調べた範囲を書かせ、読めなかった場所も残す

A&Aの考え方
AIに調査を頼むときは、答えと一緒に、調べた範囲と読めなかった場所を書き出させます。頼み方は、たとえば「CSVの項目を消したときの影響を調べて。コードはまだ変えない。根拠はファイル名と該当の箇所で示し、探した語と読めなかった場所も書いて」です。
A&Aの考え方
どの時点のコードを調べたかも残させます。外注先が今も手を入れているなら、調べた後にコードが変わることがあるからです。
仮想例
仮の例では、AIの記録は次の三つに分かれます。
A&Aの考え方
表の下の二つの行、「一部だけ」と「不明」を省いた記録は、整って見えても、変更を決める材料には足りません。探しても見つからなかったときは「この範囲では見つからない」と書かせます。「どこにも使われていない」とは別の結論だからです。
出典に基づく事実
AIエージェントの作り方をまとめたAnthropicの技術記事に「Building effective agents」があります。AIエージェントとは、自分で道具を使って作業を進めるAIのことです。記事は、各段階で道具やコードを動かした結果から進み具合を確かめることが大切だと書いています。
A&Aの考え方
A&Aはこれを、調査でも「コードを読んで分かったこと」と「動かして確かめたこと」を分けて書かせる理由と読みます。読めなかった場所は、AIが人の判断を待つ区切りです。本番の設定や顧客のデータを、調査のためにAIへ渡す必要はありません。
| 区分 | AIの記録 (仮の例) | 次に聞く相手 |
|---|---|---|
| 確認できた | 画面からのダウンロードは、CSVを作る共通の処理を使っている | なし |
| 一部だけ | 夜間の自動送信の設定に、同じ書き出し先がある。処理の本体のコードは別の所にあり、読めていない | 夜間処理を作った外注先 |
| 不明 | 取引先の仕組みが、列の名前で読むか、列の順番で読むか | 取引先の担当者 |
コードの外で、CSVを受け取る側の読み方を聞く

A&Aの考え方
CSVを受け取る側が列をどう読むかは、手元のコードでは分かりません。だから、取引先や外注先に聞いて確かめます。表の「一部だけ」と「不明」の行が、ここで聞く中身です。
仮想例
受け取る仕組みが列の名前で読むなら、消す項目を使っていないかを確かめれば足ります。列の順番で読むなら、一つ消すと後ろの値が一列ずつずれ、別の項目に入ります。どちらなのかは、取引先の担当者に聞くのが早道です。
仮想例
夜間の自動送信も同じです。処理の本体のコードが別の所にあってAIに読ませていないなら、作った外注先に、同じ書き出し処理を使っているかを聞きます。
仮想例
取れる案は一つではありません。項目を空欄のまま残せば、列の数と順番は変わりません。新しい形式を別に出すなら、今の受け取り側はそのまま動き、移る時期を相手と決めます。受け取る側も同時に変えるなら、両方の作業日を合わせます。どれを選ぶかは、受け取る側の答えを聞いてから決めます。
A&Aの考え方
AIに渡す材料を増やせば、読める範囲は広がります。それでも、取引先との取り決めのように、メールや打ち合わせでしか交わしていない約束は、コードの中にはありません。そこを聞くのは人の仕事です。表の「次に聞く相手」の欄を埋めると、外注先に任せる所と、自分で取引先に聞く所の境目が決まります。
テストが通っても、変更を通すかは人が決める

A&Aの考え方
自動テストが通っても、変更を通すかは人が決めます。テストが「CSVが作れるか」しか見ていなければ、「取引先で読めるか」は確かめられていないからです。
出典に基づく事実
Anthropicの同じ技術記事は、コードの出来は自動テストで確かめられると書いています。AIエージェントは、テストの結果を手がかりに直しを重ねられるともしています。
出典に基づく事実
そのうえで、自動テストは機能を確かめる助けになるとしています。ただ、システム全体で求められていることに合うかは、人が目を通して確かめることが引き続き欠かせないとも書いています。
A&Aの考え方
A&Aは、変更を通す前に、今あるテストが何を確かめているかを外注先かAIに聞くことを勧めます。テストで期待する出力は、AIが変更後に出した結果を写して決めず、取引先と合意した見本をもとに決めます。
A&Aの考え方
変更を通すかを決める前に、別の人が記録にある根拠の箇所を開き、同じ説明ができるかを確かめます。読めなかった場所が残っていても、誰がいつまでに何を聞くかが決まっていれば、変更の準備は先に進められます。ただし、変更を通すのは、その答えがそろってからです。
A&Aの考え方
一方で、その処理を使う所も受け取る側も全部見通せる小さな変更なら、この記録は数行で足ります。記録の量は、変更の大きさではなく、見えていない受け取る側の数に合わせます。
まとめ
A&Aの考え方
AIが返す修正箇所は、直す場所の候補です。AIには調べた範囲と読めなかった場所を書かせ、CSVを受け取る側の読み方はコードの外で聞きます。テストが通っても、変更を通すかは人が決めます。
A&Aの考え方
変更を通した後に、業務の成果をどう確かめるかは『AIの「完了」と届いた成果は別に確かめる:顧客の手元を見る4手順』で扱っています。
AIの答えは直す場所の候補で、変更を通すかは人が決めます。決める前に、調べた範囲、読めなかった場所、次に聞く相手の三つが記録にそろっているかを確かめます。
よくある質問
AIが「影響はありません」と答えたら、変更してよいですか。
すぐには決めません。その答えが、どの範囲を調べたうえでの答えかを先に聞きます。読めなかった場所が残っていれば、「影響はない」ではなく「この範囲では見つからない」という答えです。
外注先がAIで調べた結果を受け取る場合も、同じですか。
同じです。調べた範囲、読めなかった場所、次に聞く相手を、調査の結果と一緒に出してもらいます。外注先とAIのどちらが調べても、変更を通すかを決めるのは発注した側です。
小さな変更でも、この確認を全部やりますか。
全部はやりません。その処理を使う所も受け取る側も見通せる変更なら、記録は数行で足ります。受け取る側が社外にあるときや、読めなかった場所が残るときに、手間をかけます。
出典・編集情報
記事の調査で確認した一次資料です。資料の公開・更新時期と、調査時の確認日を分けて記載しています。
- Sourcegraph Claude Platform (API) case study
Anthropic · Publication date not stated; historical Claude 3 case
確認日 2026-10-23 - Building effective agents
Anthropic · 2024-12-19
確認日 2026-10-23